ここ最近、健康に関する新しい概念として「ウェルネス」という言葉が注目を集めていますが、ご存じでしょうか?
ウェルネスは従来の健康と区別する目的で、1960年代にアメリカで提唱されたもので、「よりよく生きようとする態度」のことを意味しています。
特に新型コロナウイルス感染症などの影響で心身の健康に不安を覚える人が増えている中、現代を生きる私たちにとって、ウェルネスの概念を取り入れて総合的な健康を意識することが非常に大切だと言われています。
そこで今回は、ウェルネスの意味や定義、効果やメリットなどを詳しくご紹介します。
ウェルネスの意味とは
ここ最近でよく耳にするようになった「ウェルネス」ですが、まだまだ聞きなれない言葉なので、ウェルネスの意味や定義についてよく理解できていない方も多いのではないでしょうか?
まずは、ウェルネスの意味から学んでいきましょう。
健康に向けた生活態度のこと
ウェルネスは、1961年にアメリカのハルバート・ダン博士が「輝くように生き生きしている状態」と提唱したのが始まりで、健康をより広義に総合的に捉えた概念のことです。
ただ単に身体的な健康を考えるのではなく、より生き生きとした生活スタイルを目指すもので、近年では医療分野をはじめ、スポーツ業界や美容業界、ツーリズムなどあらゆる分野で取り入れられています。
ウェルネスとウェルビーイングの違い
そんな「ウェルネス」と同じような意味を持つ言葉として「健康(ヘルス)」や「ウェルビーイング」などがありますが、それぞれ意味や定義に違いはあるのでしょうか?
続いて、ウェルネスとウェルビーイングの違いを詳しく見てみましょう。
全く違う!身体の健康と社会的充実
ウェルネスと類似した表現として、「健康(ヘルス)」や「ウェルビーイング」があります。
■ウェルネス
よりよく良きようとする生活態度のことで、健康な状態を基本として生きがいや尊厳といった総合的な視点から心身ともに豊かで充実したライフスタイルの実現を目指すこと。
■健康(ヘルス)
肉体的、精神的に健康であり、病気でない体づくりを目指すこと。世界保健機関(WHO)でも「健康とは身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病のない状態や病弱でないことではない」と定義している。
■ウェルビーイング
Well(よい)とBeing(状態)が組み合わさった言葉で、「よく在る」「よく居る」状態や、心身ともに満たされた状態を表す概念。
このように、ウェルネスと健康、ウェルビーイングでは意味や定義が異なります。
そもそも「ウェルビーイング」とは
健康(ヘルス)という言葉は聞きなれている人も多いかと思いますが、「ウェルビーイング」は、初めて聞いたという人もいるのではないでしょうか?
ウェルビーイングは簡単に説明すると、「身体・精神・社会との関わりが持続的に良好な状態であること」を意味する概念で、もともと、社会福祉や医療、心理などの分野で使用される用語でしたが、最近ではビジネス界でも用いられることが多くなりました。
ウェルビーイングが仕事やプライベート、社会全体を含めた全てが満たされた状態を指すのに対して、ウェルネスは心と体の健康を重視する概念なので、ウェルネスはウェルビーイングのなかにあると言えるでしょう。
ウェルネスの構成要素
ウェルネスの具体的な考え方は、大きく分けて7つの要素で構成されています。
続いて、ウェルネスの構成要素を詳しくご紹介します。
7つの要素で成り立っている
ウェルネスは、病気の改善・心のケア・社会参加などをはじめとした7つの視点から見た
健康になるための総合的な方法」を提案するものです。
感情(Emotional)
感情のウェルネスは、精神的なバランスを保ち、感情を上手くコントロールすることを意味します。
感情は、生活の中で精神的なバランスを保ち、生活習慣をより良いものにするために重要な役割を果たしているので、ストレスに上手に対処することが、健康促進や病気の予防につながるでしょう。
身体(Physical)
身体のウェルネスは、病気や身体的な問題と向き合い、健康な生活を送ることを意味します。
前提として「病気がない」という状態が理想ですが、病気がない状態を作るためにも、「病気にならないための予防」や「病気を早く発見する予防」「病気を悪化させない予防」が特に重要です。
社会(Social)
社会のウェルネスは、他者との前向きな関わりを持つことを意味します。
具体的には家族や友人、近所の人と交流を持つなど、他者との関わりによって精神的に良い刺激を与えることで、生活の質を改善させることが目的です。
精神(Spiritual)
精神のウェルネスは、生きがいや人生の目的を持つことを意味します。
生きていく上での意味や目的を持つことによって、健康である実感や生きがいを感じれるようになります。
具体的な方法として、自分と向き合う瞑想やヨガや太極拳などが挙げられます。
知性(Intellectual)
知性のウェルネスは、知的好奇心を満足させる取り組みを行うことを意味します。
具体的には、旅行や絵画鑑賞、執筆活動などが挙げられます。
特に知性や認知能力は、精神状態や生活習慣にも影響を与えると考えられているので、特に意識したいポイントの一つと言えるでしょう。
職業(Occupational)
職業のウェルネスは、職業を通じて社会に貢献している実感を持つことを意味します。
職業を通じて人生の目的や意義を見出すことは、生活の質に大きく影響するので、ひいては人生の満足度にも繋がります。
環境(Environmental)
環境のウェルネスは、その人自身に適した環境で過ごすことを意味します。
環境といっても、自身の生活環境だけでなく、職場環境や対人関係、社会経済状況なども含まれます。
ストレスの多い環境で過ごすと、うつ病や高血圧といったリスクが高まるとも言われているので、自分に合った環境づくりを心掛けて、適度なストレスを維持することが大切です。
ウェルネスの効果やメリット
続いて、ウェルネスの効果とメリットを見ていきましょう。
心と体の改善
ウェルネスの要素の中でも、心と体の健康に欠かせないのが身体のウェルネスです。
身体のウェルネスでは、「病気がないこと」を理想としていますが、それ以前に「病気にならない予防」や「病気を悪化させない予防」を実践することが非常に重要だとされています。
そのためにも、十分な睡眠や栄養補給、上手なストレスのコントロール、アルコールやタバコの制限などが具体的な対策として挙げられるでしょう。
これらの対策や生活習慣を身に着けていくことで、心と体の健康や心身の不調の改善といった効果が期待できます。
生活習慣病の予防
ウェルネスを通して自身の精神状態と向き合い、感情をコントロールしたり、ストレスに上手く対処したりすることで、脳卒中や心臓病といった病気のリスクが減るとも言われています。
また、身体のウェルネスでも挙げたように、飲酒や喫煙の制限や、食習慣の改善、十分な睡眠時間の確保といった行動が、生活習慣病の予防にも繋がります。
美容効果
ウェルネスは美容業界でも注目されている概念です。
最近では、ウェルネス関連の商品として、睡眠やオーラルケア、女性特有の悩みにアプローチするものなども多く販売されています。
こういったウェルネスに特化した美容商品を使ったり、食習慣の改善や適度な運動を行ったりすることで、美容効果も期待できるでしょう。
免疫力の向上
ウェルネスの要素でもある、精神のウェルネスや環境のウェルネスでは、ストレスのかからない状態を目指すために、ヨガや瞑想、太極拳などが推奨されています。
特にヨガや太極拳は、精神的な安定だけでなく、高血圧やうつ病の予防や、免疫力のアップ、認知能力の改善にも効果があるとされています。
ウェルネスに取り組むことで、免疫力の向上が期待できるので、疲れにくい体になったり、風邪などの病気にかかりにくくなったりといった、身体的な健康効果が得られるでしょう。
自己肯定感が高まる
社会的なウェルネスや職業のウェルネスにおいては、仕事や人との繋がりを通して社会に貢献するため、人生の目的や意義を見出すことができ、充実感や満足感を得られます。
自分の人生や生き方に満足できるようになると、自然と自己肯定感も高まるので、自分に自信が持てるようになるでしょう。
自信が付くことで、より良い対人関係を持てるようになったり、仕事のパフォーマンスがアップしたりといった相乗効果も期待できます。
生活の質の向上
ウェルネスの7つの要素に取り組んでいくことで、自然と生活そのものの質が向上します。
・健康の促進
・ストレスの少ない環境
・良好な対人関係
・仕事の充実
・健康的な食生活
など、総合的な生活の質が高まるので、より良いライフスタイルへと近づけることができます。
まとめ
今回は、ウェルネスの意味や定義、効果やメリットなどを詳しくご紹介しました。
ウェルネスは、ただ単に体の健康だけを考えるのではなく、「総合的に見て生き生きとした生活を送るための手段」と言えます。
食生活の改善や適度な運動、他者との関わりや、ヨガや太極拳など、ウェルネスの概念は比較的取り入れやすいものが多いので、人生をより良いものにするためにも、ウェルネスの概念を意識した生活習慣を送ることが大切です。